第02話 死を知る世界で
《玄。聞こえる?》
操作卓の端末から、チノは呼びかけた。床へ落ちた小銃の先には玄の下半身があり、上半身は、そこから離れた血の中に倒れている。顔の映像を拡大しても、唇は開かず、胸も動かなかった。
《ねえ、返事して》
「玄!」
美冬がⅠの槽の左から駆け寄り、膝をついた。肩をつかんだ手が血に滑る。離れた腰を見た途端に口が止まり、玄へ戻した指だけが強く曲がった。
《玄が……美冬、玄が!》
「玄、……嘘でしょ」
右から来た蓮司も、床に離れた身体を見て足を止めた。伸ばしかけた手が宙に残り、銃口が揺れる。
「おい、玄!」
《聞こえますか。……玄!》
コウの呼びかけにも返事はない。美冬の手は玄に触れているのに、チノには声を送ることしかできなかった。
M12がⅠの槽へ回り込んだ。基部の接続台には、ケーブルで槽へつながれたジンの端末がある。白い手が、そこへ伸びる。
《美冬、前!》
美冬は顔を上げ、白い腕の継ぎ目へ撃ち込んだ。手が跳ねた隙に槽へ駆け戻り、端末の前へ立つ。それでも肩越しに玄を見ようとした。
「この野郎……!」
蓮司が右へ移りながら撃つと、M12の背中の銃口が彼を追った。
《蓮司、下がって!》
発砲はコウの声と重なった。蓮司の右脇腹から血が噴き、身体が壁へ叩きつけられる。彼が膝を折る間に、M12は美冬の銃身を跳ね上げ、身体を槽へ打ちつけた。小銃が床を滑り、落ちた美冬の左脚は不自然な向きに曲がっていた。
《美冬、動くな! 脚が――》
M12が端末へ向き直る。美冬は動く方の脚で床を蹴り、接続台へ背を寄せた。
《下がって。お願いだから》
「ジンには、触らせない」
小銃へ伸ばした左手を白い足が踏みつけ、悲鳴が漏れた。M12が美冬の肩越しに端末へ手を伸ばした時、頭の横で火花が散る。
「まだ、こっちがおるぞ」
蓮司が壁にもたれたまま撃っていた。
《蓮司、傷を押さえて!》
傷へ当てた手まで銃へ戻す蓮司を見て、美冬は踏まれていた手を引き抜き、右手で小銃の負い紐をつかんだ。M12は蓮司へ飛びかかり、次の一発が出る前に、その胸を腕で貫いた。
壁へ血が飛んだ。腕が抜かれると蓮司は銃を落とし、胸を押さえてずり落ちた。
《蓮司。私の声は、聞こえますか》
「……聞こえる。お前は、続けろ」
《終わったら、そちらへ行きます。だから――》







